京大教授と優等生と数学落ちこぼれのHAPPYその2

12月12日(金)晴れ 暖か
数学落ちこぼれHAPPYその2である。
2人くらいのマンツーマンといっても、誰と誰を一緒に勉強させるかは、S教授も悩んだことと思う。私以外は出来がよすぎる男子軍団。みな同じ中学ではないにせよ、どこか牽制球を投げ合っていたことだろう。同じ学年や1つ上の学年の男子と一緒になると、言葉には出さないが(なんでこんな簡単な問題も解かれへんのや、ようここにきとるなあ、ふっ、、)みたいな態度を顔にも出さずとってくる。それが感受性の強い私には解ってしまう。私が解ったことをS教授も気がつく。ここでも躓いたらこの子は一生数学を勉強しなくなると踏んだはずだ。それでよく一緒に勉強したのが「ボン」だった。S教授は他の男子には「○○君」と呼ぶのだが、この男子は「ボン」だけ。名前を出すと有名すぎたのか?1学年下の中学1年。早生まれの私とは同じ歳のはずだ。恋愛感情ではないのだが、私は人間として「ボン」が大好きだった。とても素直で優しい。端正な顔立ちではにかみやで、できるのに、1学年上の私が出来なくても決して見下さなかった。真面目にやっていても私は面白いらしい。S教授と何かおかしなことがあると、「ボン」は(ここで笑ったら悪い、)とこらえるのだ。それが私はわかるので、眼で「ボン」に(笑ったらいいのに)という。「ボン」は(しまった、こらえていたのに悟られた、どうしよう)と爪をかむ。(爪をかむな!)とまた無言のうちに言う。テレパシーで話しているようだった。それをS教授が察して、「ボン、~は~やなあ」というと私が声を出して笑い出す。つられて「ボン」も笑う。数学の問題が解けて{とけた~}と私が言うと、(よかったですね)と言葉に出さないのだが喜んでくれた。「ボン」はそんな問題はすらすらとっくに解けているのだ。さて、2年の一学期が終わる時、マダ、そんなに数学は出来なかった。しかし、少しずつ理解できていった。答えを出す結果は出ないのだが同じ出来なくても100のうち以前は30の理解が70の理解になってきた。2年の学校の数学のM先生もいい先生だった。そのM先生に「センセイ数学は答えを出すばかりではないと思う。同じ答えを出すにも、過程が大事なのが数学でしょう?」M先生は「そうだよ。よく気がついたね。」と。回答はあってても過程がルール無視なら正解ではないはずだ。これは人生も同じだ。目的の為には手段を選ばない、では善く無い。さてS教授が通知簿を見せろと仰る。「センセイ数学だけでいいでしょう?」といっても駄目だと。そうしたら「おお、他のは成績いいのもそこそこある。なんでや?」『好きだからやってる』「夏休みは何の勉強するんや?」『自由課題でブラインシュリンプの研究をします』これはプランクトンの一種でその卵を孵化させて成長を調べるのだ。自分で理科の雑誌を買ってそこから興味があったので研究課題にした。「理科好きなら、数学やれる。」といわれる。本が好きだった私に「数学はたのしい」みたいな大事なご自分の本を貸してくださった。S教授のところで勉強するのは好きになった。勉強中はおしゃべりもしないが、3人が居たら、気持ちがいい時間が流れる。勉強が終わるとS教授の奥様が蜂蜜入りのミルクコーヒーを運んでくださる。これが美味しい!ボンは自転車で来てるので「ボン!気ぃつけてな」といわれるだけだが、私は奥様が門の外に出て、S教授の家から1本道で200~300メートル先の私の家に私が、家の門に入るのを見届けるまで奥様が外で見送って下さる。毎回だ。雨の日とか寒い時もこれからはあるので奥様にお願いした。『私は大丈夫ですから、玄関でさようならでいいです。心配です。』と。そうしたら「大事なお嬢さんですから、そんなわけにはいきません。」『私、お嬢さん扱いされたこと無いのでお嬢さんではないです。』いくら言っても聞いてもらえない。見送りはずっと続いた。この奥様の愛情には今思い出しても涙が出る。数学落ちこぼれではあるがS教授と奥様とボンの優しさのお陰で頑張れたと思う。ボンはどうしているかなあと思い出す。S教授の勉強時間でしか一緒でないし、名前も知らない。でもこのHAPPYな時間は今思い出しても心が温かくなる。数学で躓いたお陰でこんな善い人たちと出会えた。善く無い事も、HAPPYにつながっていくね。

京大教授と優等生と数学落ちこぼれのHAPPYその2” に対して2件のコメントがあります。

  1. 石畳のん♪ より:

    テレパシーの会話・・・美しい表現!
    ハッピーさんの お話は、描写が素晴らしくて
    小説やドラマの様に楽しくて、次は?次は?と
    読み進めちゃう。ボンとは~もしかしたら??淡い
    初恋だったのかも?(勝手な妄想お許しを)
    理科がお得意だったのですね!そしていずれ数学も!?
    S先生、奥様、ボン始め お仲間との思い出、素敵でした♪

    1. happy-ok3 より:

      石畳のん様、こんにちは。いつも感謝します。
      ボンは、同じ区内の者同士だったと思いますが、弟のような感じでした。

      私と違って、出来が良かったです!
      良い家柄の、お坊ちゃん?かも。

      教授が、人格的に出来た方だったので、その影響はお互いに受けたと思います。
      すごくいい思い出です!(#^.^#)
      いつも本当に有難うございます。

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